こちらの記事では、ヘルスリテラシーと健康経営の関係についてまとめています。従業員のヘルスリテラシーを向上させるポイントについても紹介しているので、健康経営を図るうえでヘルスリテラシーの教育を取り入れたいと考えている方は参考にしてください。
ヘルスリテラシーとは、健康情報を入手した際に正しく理解して評価できる知識、またはそれらの情報をもとに自身の健康状態改善に活用する能力のことです。健康に関する情報は世の中にあふれているからこそ、本当に正しい情報か、自分にとって必要な情報かどうかを判断する能力が求められています。
ヘルスリテラシーを身につけることができれば、ヘルスケアや疾病予防に対する正しい判断や意思決定が行えるようになり、QOL(生活の質)の維持・向上にもつながりやすくなるでしょう。
健康経営とは、従業員の心身の健康を会社の資本の1つと捉え、従業員の健康管理や維持に投資することで組織の生産性や収益性の向上、イメージアップなどを図る取り組みを指します。従業員1人ひとりのヘルスリテラシーの向上は、健康経営の基礎を支える重要な部分です。
また、東証と経済産業省によって2015年から開始されている「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」(ホワイト500/ブライト500)においても、認定条件に従業員のヘルスリテラシー向上に関する取り組みが含まれています。
優れた取り組みを実施している企業として社会的評価や企業価値向上を図るのであれば、従業員のヘルスリテラシーの向上は取り組むべき課題の1つと言えるでしょう。
公衆衛生研究の第一人者とされるナットビーム氏によれば、ヘルスリテラシーは基本的なものから高度なものまで3つの段階に分けられるとしています。3つの段階とは「機能的ヘルスリテラシー」「相互作用的ヘルスリテラシー」「批判的ヘルスリテラシー」のことで、それぞれの段階の特徴について詳しく見ていきましょう。
ヘルスリテラシーのなかで最も基本となる段階で、健康リスクや保険医療の利用に関する情報を理解できる能力のことです。たとえば医師や薬剤師からの説明を理解できるか、薬局で受け取る薬剤情報提供書や医薬品の添付文書の内容を理解できるか、などが機能的ヘルスリテラシーに該当します。
健康や医療に関する情報を自力で探す、他人に伝達するなど、情報を適切に扱って行動する能力を指します。相互作用的ヘルスリテラシーを取得するには、他者とのコミュニケーションを通して情報を入手・理解するための社会性を備えていることが前提です。
そのため、機能的ヘルスリテラシーよりも高度なレベルに分類されます。相互作用的ヘルスリテラシーの例としては、知人からおすすめの病院を聞き、自分でその病院について調べたうえで受診するかどうかを判断する能力が該当します。
批判的ヘルスリテラシーは入手した健康や医療に関する情報をうのみにせず、社会的・経済的背景といった高次的な情報を踏まえたうえで、多角的な視点から情報を分析・活用できる能力のことです。自分自身のために情報を活用し、さらに集団やコミュニティに影響を与えられる最も高度な段階となります。
ヘルスリテラシーが必要とされる理由は、個人の生命やQOL(生活の質)を維持・向上させるうえで重要な要素となるからです。
ヘルスリテラシーが低いと病気にかかりやすくなったり、受診が遅れたりなど、生命やQOLの質に影響します。生活の質を維持して健康であり続けるためにも、ヘルスリテラシーに対する意識の向上が重要となってくるのです。
ヘルスリテラシーが低い場合、以下のようなデメリットを引き起こす恐れがあります。
従業員のヘルスリテラシーを向上させるために、企業が取り組む施策のポイントについて紹介します。
健康経営のための事前準備として、まずはアンケート等を実施して現在の従業員のヘルスリテラシーや健康への関心度を把握しましょう。年1回の実施が義務化(または努力義務)されているストレスチェックの追加質問として設ければ、よりスムーズに回答を集めることができます。
従業員のヘルスリテラシーを把握することは、適切な取り組みの企画・案内の考案や、その後の効果検証を行ううえでも重要です。
従業員のヘルスリテラシーを把握したら、次は従業員が自身の健康状態を見直すきっかけを用意しましょう。ここでは健康診断の結果から健康に向き合うだけでなく、当事者意識を持って改善や維持向上に向けて主体的に動くことを目指します。
企業が行う後押しとしては、産業医・保健師などによるアドバイスや指導機会の提供、もしくは自主的に健康について学べる仕組みづくりなど、具体的な取り組みを検討すると良いでしょう。さらに、健康診断の結果を収集・分析し、個々に応じた運動や栄養、メンタルヘルスケアに関する助言ができる体制を整えておくのが理想です。
社内報や掲示物、社員研修の場を活用しながら、健康に関する情報の提供を行うのもおすすめです。ただし、やみくもに情報を提供するのではなく、従業員のヘルスリテラシーや関心度に応じた情報を案内するのがポイント。また、専門家による研修やセミナーを設け、適切な情報を分かりやすく伝えることもヘルスリテラシーの向上に有効です。
産業医や産業保健師などによる相談窓口を設置することも、ヘルスリテラシーの向上につながります。特に産業医は従業員の健康状態について把握しているため、専門家の視点から従業員それぞれに適切かつ具体的な助言の提供を期待できるでしょう。
また、ヘルスリテラシーへの関心はあってもうまくいかないと悩んでいる従業員へのフォローとして、カウンセラーを配置するというのも有効な方法です。カウンセリングを受けることで、生活習慣の改善を図るためのヒントやマインドの問題の解決につながる可能性があります。
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